スペインワインへの誘い(その④~シェリー)

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酒精強化ワインってご存知ですか?

シェリーをまだ飲んだことないって方も結構いらっしゃるのではないでしょうか? シェリーはスペインのアンダルシア州(その中でも、カディス県のヘレス・デ・ラ・フロンテラ、サンルーカル・デ・パラメーダ、エル・プエルト・デ・サンタマリアを結ぶ三角地帯)で造られているの酒精強化ワインです。『酒精強化ワイン』とは文字通りアルコール度数を人工的に高めたワインです。具体的には発酵の過程で(もしくは発酵終了後に)ワインにブランデーを加えることによって、アルコール度数を高めています。

なぜ酒精強化?

なぜわざわざブランデーを加えてアルコール度数を高めるのでしょう? ワインは糖分が酵母の働きによってアルコールと二酸化炭素に変化する働きを利用して作られています。酵母がアルコールを造り出す重要な役割を負っている訳ですが、実は酵母はアルコール度数が15度程度になるとその働きを止めてしまいます。つまりワインのアルコール度数は15度以上にはならないのです。

アルコール度数が低いために、ワインは空気に触れることによって酸化が始まり、時間の経過と伴に品質が急速に劣化してしまいます。そこで発酵の過程で(もしくは発酵終了後に)ブランデーを加えてアルコール度数を高めることによって、ワインの保存性を高める効果を狙ったということです。大英帝国の艦隊が活躍していた頃、保存がきくシェリーがイギリス人に多いに好まれていたそうですし、今でもイギリスはシェリーの一大消費国です。下の写真はウィンストン・チャーチル卿の80歳の誕生日に贈られたシェリーの樽です。チャーチルもシェリーが大好きだったようですね。

日本人にだってシェリーを好きな人が・・・・。皇太子徳仁親王陛下だってシェリーのワイナリーに訪問されているようです。

酒精強化の効果は保存性を高めるだけではありません。アルコール度数が高まることで、ワインのボリューム感が増し、またアルコール度数が高い状態で熟成を行うことによって、独特な風味が生まれるのです。

シェリー特有の作り方

シェリーは上述のようにイギリス人に多いに好まれ、シェリーにとって輸出市場が重要だったことから、ワインのように年によってその品質にバラつきがでるのは好ましくなく、品質を一定にするためにソレラシステムと呼ばれるユニークな方法を使った熟成を行っています。

この方法では、熟成中のシェリーが入った樽を、より古いシェリーが入った樽の方が下になるように、3~4段に積み上げます。瓶詰めする際には一番下の樽からシェリーを取り出し(但し、3分の1以上は取り出さない)、その一段上の樽からすぐ下の樽にシェリーを補填します。さらにその一段上の樽からすぐ下の樽にシェリーを補填し、最上段の樽には新しく仕込まれたシェリーを補填します。

こうすることにより、一番下の樽には複数の年のシェリーがブレンドされた状態になっており、品質が均一になるという訳です。つまり、シェリーはワインのような”農産物”ではなく、”加工製品”と言える訳です。

また、酒精強化したワインを熟成する際に、ワインの表面にフロールと呼ばれる膜が生まれ、この膜がワインを酸素から守ると同時に独特の風味を生み出します。

シェリーにはどんな種類があるの?

発酵が完全に終了した後(つまり糖分の殆どが酵母によって分解された後)に酒精強化すると、辛口のシェリーになります。一方で、発酵の途中(つまり糖分がまだ残っている状態)で酒精強化すると、甘口のシェリーになります。

また、フロールの下で熟成すると生アーモンドのような独特な風味が生まれ、スッキリとしたフレッシュな味わいとなります。一方で、アルコール度数をフロールが繁殖できないところまで高めることにより、フロールなしで酸化熟成すると、ヘーゼルナッツクルミのような香りが生まれ、フルボディーで複雑な味わいとなります。

辛口の代表的なものにはフィノマンサニーリャ(アルコール度数15~19%、フロール有、すっきりフレッシュ)、アモンティリャード(アルコール度数16~22%、フロール中程度)、オロロソ(アルコール度数17~22%、フロール無、フルボディーで複雑)があり、これらの残糖量は5g/ℓ以下です。甘口の代表選手はペドロ・ヒメネス(アルコール度数15~22%、フロール無、フルボディーで複雑)で、残糖量は212g/ℓ以上です。

このようにシェリーと一口に言っても、食前酒として楽しめるものから、食後酒として楽しめるものまで幅広く(もちろん食事と合わせることも可能)、多様なシチュエーションで楽しむことができるのです

また、ワインのように抜栓してすぐに飲まないといけないというプレッシャーもありません

ぜひご自宅で色んなシェリーを試してみてはいかがでしょう?