テンプラニーリョは言わずと知れた、スペインを代表する黒ブドウ品種。その栽培面積は、スペインのワイン用ブドウ栽培面積全体の約20%を占める。栽培地域はスペイン全土に広がっているが、特にD.O.Ca リオハ(同地域のブドウ栽培面積の75%を占める)およびD.O.リベラ・デル・ドゥエロ(同地域のブドウ栽培面積の96%を占める)が代表的な産地。尚、D.O.リベラ・デル・ドゥエロでは、別名(正確には同地域での栽培に適応したクローン品種名)ティンタ・デル・パイスもしくはティント・フィノと呼ばれている。さらに、D.O.ラマンチャではセンシベル、D.O.トロではティンタ・デ・トロ、D.O.ぺネデスでは,ウル・デ・リュブレなどの別名で呼ばれている。

テンプラニーリョはスペイン語のTemprano(早熟)に由来しており、その名のとおり他の品種より早熟なところが特徴。従って、スペインの中でも比較的北部または標高の高い地域での栽培に適している。そのような地域では夜間に気温が急激に下がることにより、ブドウの糖度の急激な上昇が抑えられ、また同時に酸がしっかりと保たれることから、はつらつとした酸と高いアルコール度数を同時に持つバランスがとれたワインが生み出される。

果皮が厚いことから、濃い色調でタンニンがしっかりしたワインが造られる。特に産地が南になるほど、果皮は厚くなり、D.O.CaリオハよりもD.O.リベラ・デル・ドゥエロやD.O.トロで栽培されるブドウの方が果皮が厚く、従ってより濃い色調のワインが作られる。

テンプラニーリョは旱魃に弱いことから、灌漑の技術が導入される1990年代まではD.O.ラマンチャやD.O.バルデペーニャスなどの南の産地では多くは栽培されていなかった。

他の品種に比べて酸化に強いことから、樽での長期熟成に適しており、一時は樽香を効かせたワインが多く作られていたが、最近は樽香を抑え気味のワインの方が主流になりつつある。とは言え、樽で長期熟成した複雑な香りを持つワイン造りに拘っている生産者も一定数いる。

テンプラニーリョは栽培環境やワイン醸造方法によって様々な顔を持つ品種なので、代表的な香りの特徴というものは捉えにくいが、一般的には北の産地では中程度の赤系果実(イチゴ、レッドチェリー、レッドプラム等)の香りが特徴で、産地が南になるほど黒系果実やジャムの香りが加わる。また熟成によって、なめし皮、たばこ、森の下草、チェダーチーズのような複雑な第三アロマも生まれる。北の産地で作られるワインは酸味、アルコール、ボディーともに比較的軽やかであるが、産地が南になるほどアルコールやボディーがより力強くなる。

合わせる料理であるが、熟成させない早飲みタイプのワインはラ・リオハ州や、ナバーラ州の野菜料理との相性がよく、長期熟成した複雑な香り、しっかりしたボディーを持つタイプのワインはカスティーリャ・イ・レオン州の伝統料理であるローストラムや子豚の丸焼きなどとの相性が良い。

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